電車男

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笑い泣き度 ★★★★★

新潮社　　￥1,365

２ちゃんねるの独身男性板の、カップルのいちゃいちゃする話をネタに鬱になる、という趣旨のスレのなかで、そのスレの住人からカップルになる人が現れるというパターンのひとつです。この話以前からまとめサイトをたまたま見つけたりしておもしろいなーと思っていました。そのカップル成立にいたる過程の本人たちのストーリーも、それはそれでおもしろいのですが、なんといっても住人の過剰な反応がおもしろかったのです。

電車男の話は本になってから知り、あ、あのパターンの最新版か、ぐらいに考え、また大笑いするつもりで読んでみました。

大笑いしました。で、大泣きしました。

今回は本人たちのストーリーにも少なからず心を打つものがありました。そして、スレの住人の反応も期待どおりの可笑しさとそれ以上のやさしさがありました。人が人を思いやるやさしさとはかくも人の心を感動させるものなのですね。決戦の日のお話で思わず涙ぐんでしまったのはなんと電車の中でありました。

電車男の話がウソなのではないかという話もありますが、匿名掲示板に書かれた内容が真実かどうかということは最初から不確かなものです。わたしは掲示板はフィクションであろうことを前提に楽しんでいます。

真実かどうか定かでないのにノンフィクションだと大々的に言うのはよくないでしょうが、電車男の話はひとつのドラマとしてとても美しい完結をもったと思います。

映画の「ビッグフィッシュ」ではないですが、本当の話であることが重要なのではなく、ホラ話であっても、それで何を伝えたいか、伝わるか、それがとても大切なのではないかと思うのです。

わたしはこのお話を読んで、スレの住人たちが、人より多く傷ついている分、人よりずっとやさしいということを知りました。彼らみんなが幸せになってほしいとほんとうに思います。