危ない精神分析

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意識の変革度 ★★★★☆

矢幡 洋  亜紀書房  ¥1800

 

記憶回復療法、退行催眠療法の危険性への注意を呼びかけています。

自分が生きにくいのは自分のせいではなく親のせいだった、という他人からのお墨付きをもらうのは、とても魅力的なことです。

わたしもそういった考えへの誘惑にかられたことは正直何度もあります。

「あなたは自分自身の人生に対する責任がある」という言葉は、そんな甘い誘惑を断ち切らせるものでした。厳しくもありますが、「所詮、親に間違った育てられ方をした人間はまともに育たない」という絶望からも救ってくれます。

わたしの持論として、「親と良好な関係を築いていない人はどこか、対人関係でぎこちない」というものがあります。もっというと、いわゆる「変な人・ずれている人」が多いということです。それは自分自身に対してもっとも感じることでもあります。人とのコミュニケーションというのは、まず親から学ぶものですが、それが不十分、あるいはずれていた、ということなのだろうと思います。

がんばってはいるけど所詮わたしってずれてるのよね、というあきらめを捨て、今からやり直せばよいということに気づかせてくれました。

厳しいようだけれども、本当の意味で回復してほしいという著者の患者に対する愛情を感じました。

また、成長の過程である能力が抑圧されたとき、別の能力が伸びた例をあげ、

「自分に欠けているもののかわりに伸びた能力はなんだろうかと探してみてはどうだろうか」と提案しています。何もかもだめな人なんていないんだよ、というメッセージを感じます。

心の専門家でありながら、心の問題が最重要ではなく、まず衣食が足りることのほうがはるかに重要、というスタンスなど、とてもバランス感覚のよい方だと感じました。