沈黙

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遠藤 周作 新潮文庫  ¥476

人生の深さ度★★★★★

 

実は初めて読んだのは高校の国語の模試の出題でした。ほんの見開き1ページ程度の抜粋でしたが、あっというまにキリスト教弾圧の時代に引き込まれていました。抜粋の仕方も今思えば見事で、もっとも重要なシーンだったのでしたが。その後、きちんと読んだのかどうか記憶が定かではありませんが、ずっと、弾圧され苦しむ信徒を、神はなぜ救ってくれないのか、なぜ沈黙しているのか、という作者自身の葛藤がテーマだと思っていました。最近、機会があって読み直してみたのですが、ちょっとした衝撃を受けました。主人公である神父は、信徒の苦しみを目の当たりにし、神の沈黙に苦しみます。あなたのために苦しむ者たちをなぜ救ってくださらないのか。改宗した別の神父は、その怒りのために信仰を捨てたのだと彼を説得します。わたしが記憶していたストーリーは、主人公が沈黙を続ける神に、怒りと悲しみをもって信仰をすてたのだというものでした。しかし、実際は、まったく違うものでした。神はただ沈黙していたのではなく、共に苦しみ、悲しんでいるのだと神父は感じるのです。自分が改宗することで他の信徒を救うことを神は許しておられる、それが神の愛なのだと彼は思うのです。しかし、その姿には悲哀が漂っています。信仰とは、神とは、愛とはなんなのか。以前読んだときには気づかなかった、「許し」がその答えなのかもしれません。